当日、ご来場者様からのご質問をいただきながら、
時間の関係でお答えできなかった質問への回答を表記しています。
仙台大学 子ども運動教育学科長 教授
久能 和夫様への御質問
質問1
避難所運営にあたり、近隣の企業からの支援等はありましたでしょうか?
あれば具体的な内容と事前に取り組んでいた内容あればご教授願います。
回答1
近隣企業からの支援として、代表的なものはNTTによる緊急電話の設置、全国チェーン飲食業関係のお店からの温かい食事提供、ガス設備会社からのプロパンガスの提供、さらには神社本庁からの赤ちゃん用粉ミルクの提供などをいただきました。
質問2
震災時に地域社会企業との協力はありましたか?
また、企業に求めるものがあればお教えください。
地域社会、行政、学校、企業全てが連携していないと対応できないと考えます。
回答2
前述のとおりですが、東日本大震災を契機にして、企業側に災害時におけるCSRをどのように進めていくかという具体的な活動が展開されるようになってきたと思います。その動きをさらに加速し、地域への喧伝活動もより一層推進していただきたいと思います。
質問3
市立の小中学校は避難所に指定されていることが当たり前だと思うのですが、避難所に指定されていない学校もあります。しかし、地域住民にとっては、そんなこと関係なく学校=避難して良いところだと考え、どんどん避難してくる事を宮城県の特別支援学校の方から伺ったことがあります。そういう場合の備えが指定されていない学校は不十分だと思うのですが、どのような手立てをくんでいけば教職員の意識がかわるでしょうか?
回答3
東日本大震災の時、指定避難所の公立小中学校以外の学校等にも近隣住民の方々が避難してきて、対応にあたられたと話を聞いております。災害規模・状況により緊急の対応が求められる場合、「共助」の精神で一次対応にあたるようにしていくことが必要だと考えます。仙台市では、指定避難所での生活が困難な高齢者・障害者の方々のために二次的避難所としての福祉避難所が設定されています。
質問4
駅から締め出された被災者を受け入れなければならなかったとの話でしたが、それは災害時には受け入れることになっていたのか。そうであるなら学校のキャパとして人数だけでなく、物資やサポートの人員数もマニュアルに入っているものと思われるがJRを含めた県・市・区と学校での運営に向けての協議が行われていたと推察するが実際には如何?
回答4
東日本大震災前は、災害時の受け入れについては、地域防災訓練として学校側と一緒に取り組んでいた学区内住民の方々が対象となっており、備蓄の食材数もその方々の数を基にして一定の割合で算定されていました。東日本大震災後に、市当局と駅近辺の企業・会社等との災害発生時の避難者誘導・受け入れの協議が進められ、計画的に避難訓練も実施されています。
質問5
避難所運営は本来、教職員ではなく(兵庫県の地域防災計画では7日程度までとされています)行政の業務としてされています。また、校長・共闘が避難所運営に全般的に関わったとのことですが、仙台市の当時の対応はどのようなものだったでしょうか。管理職の先生は当時、休む間は…?
回答5
避難所の開設及び運営の主体は、ご指摘のとおり行政側にあります。しかし、東日本発生当日、学校と行政(区役所担当部署)と防災無線の途絶などから開設及びそれに引き続く運営の主体は学校側の判断で行いました。その後の運営につきまして、区役所及び教育委員会から派遣された担当職員と、地域の各団体で組織された災害対策本部と学校の三者が一体となって避難所運営に当たりましたが、学校施設の管理運営の面から校長・教頭の管理職は交代で24時間学校に常駐しました。
質問6
教員だけでなく学校事務職員等も対応にあたったかと思いますが、学校事務職員の当時のうごき、期待することがあればご教示ください。
回答6
学校事務職員の方の時間を超越した対応がなければ、多くの避難者を抱えた避難所運営は困難でした。発生当日、及びそれ以降において指定避難所となっている学校に運び込まれてきた支援物資(食料・生活物資等)の受け入れ及び管理そして配給計画の立案など、献身的に対応していただきました。
質問7
学校では収容可能人数があることがわかった。収容可能人数を大きくオーバーする時の対策を教えてほしい。また、その対策はしっかり定められているのか教えて欲しい。
回答7
短期・中期・長期の見通しをもって対応にあたることが求められます。短期では、可能な限り受け入れながらも互いに緊急事態であることの認識を持って、避難所運営にできるだけ協力していただけるように説得していく。中・長期としては、避難者としての「共助」の精神を発揮していただき、当事者意識をもって避難所運営により積極的に関わってもらうことが大切です。
質問8
学校現場(最重要危険地域)と行政の意識の差を埋めるにはどうすればよいか。
回答8
学校と地域代表そして行政側による三者が一体となって、具体的な課題・問題点を明らかにし、それぞれの立場で行えることを共有し、互いに支え合う体制・仕組みを再構築することが求められると思います。
質問9
避難所運営マニュアルを作成する際、ペットに関する事項で気をつける点を教えてください。
回答9
避難所である学校の施設には、通常、ペット(小動物)は飼育小屋以外に施設としての環境を整えていないことを理解していただく。
質問10
地域ネットワークが機能している避難所において、そのネットワークから外れた人々に対する支援には何が必要か?
回答10
7でも述べましたが、避難所で共同生活を行う当事者として、「共助」の精神をもって日常を過ごすことを理解し、行動に移していただくことを互いに分かり合うようにすることが大切です。
質問11
互いの顔を知らない不特定多数の人々が集まる避難所において避難所間で公平性のある運営を行うには何が必要か?
回答11
10で述べたとおりです。原則は「公平・平等」ではありますが、守られなければならない方(乳児、妊産婦、障害を有している方々など)に対しては特段の配慮がなされることを理解していただくことが必要だと思います。
関西国際大学 セーフティマネジメント研究所 研究員
田中 綾子様への御質問
質問1
市立の小中学校は避難所に指定されていることが当たり前だと思うのですが、避難所に指定されていない学校もあります。しかし、地域住民にとっては、そんなこと関係なく学校=避難して良いところだと考え、どんどん避難してくる事を宮城県の特別支援学校の方から伺ったことがあります。
そういう場合の備えが指定されていない学校は不十分だと思うのですが、どのような手立てをくんでいけば教職員の意識がかわるでしょうか?
回答1
備えのないところに対応が迫られる点では、指定外の避難所の状況の方が過酷かもしれません。指定外の学校にも避難者対応のマニュアルを設置し訓練を実施することが理想ですが、まずは、近隣の小中学校で既存の対応マニュアルを見せ合い、災害時の連携協力について話し合っていただくことから始めるのはいかがでしょうか。その中で、指定外の小中学校の課題についても検討していただくのが良いと考えます。備蓄や災害対策用品を避難訓練の機会に使ってみる、具体的に時系列に沿って行動するイメージを持つことが効果的です。人の意識を外側から変えるのは大変ですから、学校の中からでも外からでも、意識の高い方が主体となって仲間を増やしていくような手立てが一番の近道だと思います。
質問2
避難所が想定外の人であふれてしまう事について人の心理に基づく原因を指摘され、まさにその通りだと思いました。行政の多くは防災活動と言いながら、その内容は減災であり通常時にこそ想定外にさせない予防対策を講じることで、防災に繋げなければならないのだと教えていただきました。このことについて、避難所に人が押し寄せて来ない為の具体策とは何があるでしょうか。
回答2
避難所に集まる人は、地域内の方と地域外の方に大きく分けられます。
地域内の方は、自宅より避難所の方が安全や支援物資あるいは情報が得られると感じれば、避難所に集まります。また、人が集まっていることへの安心感を求めている場合もあります。これらを避難所以外、たとえば自宅や近所のコミュニティでまかなうという認識が広がれば、避難所に来る人は減るでしょう。津波や土砂災害の恐れがある場合などの安全確保は最優先ですから、まず命を守るための垣根のない協力が第一ですが、その後の避難生活には備えの部分が効いてきます。情報については行政とコミュニティが受発信体制を協力して築かなくてはなりません。
一方、地域外の方は身を寄せる場所を失って一時的な居場所である避難所に集まります。軽装で備えのない人が多いので、滞留時間が長くなれば、自然と必要な支援も増えます。結論からいえば、学校以外の受入れ先が必要です。安全のために特定区域からシャットアウトすることは重要ですが、利用客や自治体として誘致した観光客の行く先までをプランとして持っていること、そのための官民連携が重要です。
長田区 野田北部まちづくり協議会 会長
河合 節二様への御質問
質問1
震災時に地域社会企業との協力はありましたか?
また、企業に求めるものがあればお教えください。
地域社会、行政、学校、企業全てが連携していないと対応できないと考えます。
回答1
私自身零細企業を地域で営んでいますが、他にも多岐に渡る業種やスキルを持った方々がおられました。また地域外の友人知人とも連携をとって行ったのが実情です。ただ学校は避難所として協力はいただきましたが、復興過程においては地域の一方的な負担となったと思います。
質問2
災害対応にあたっては大変なご苦労があったと思いますが、具体的な課題や問題点は何かあったでしょうか。
回答2
何があっても冷静に臨機応変な対応が求められます。事前に準備も必要ですが、あまり気になされない方がいいかと思われます。課題や問題点はその時々で現れますので準備をしたから万全とは言えません。でも必要最小限度の準備は行政等が出している防災マニュアルを参考にしてください。でも現場では機転が求められます。
質問3
地域ネットワークが機能している避難所において、そのネットワークから外れた人々に対する支援には何が必要か?
回答3
そもそもネットワークから外れる人をなくすような対応を日常からすることが大事です。地域コミュニティを紡いでいくしかありませんが、中には拒絶する方も少なくありません。緊急避難の現状では、そこまでの対応は考えなくてもいいのではないでしょうか。天は自ら助すくる者は助くで。
質問4
互いの顔を知らない不特定多数の人々が集まる避難所において避難所間で公平性のある運営を行うには何が必要か?
回答4
まず無理です。不平等や不公平を容認してもらう方に努力すべきかと思います。たとえば弱者(高齢者・子供・女性)優先というのを理解してもらうことが大事かと思います。
関西国際大学 副学長
齋藤 富雄様への御質問
質問1
抜き打ち訓練の実施について、特に関係機関の参加については相当な調整、労力が必要だったのでは無いかと思います。関係機関の訓練参加について課題となった事項はあったのでしょうか。
回答1
関係機関の訓練参加については、大震災以前からシナリオがたの訓練をしていましたので参加についての特段の課題は有りませんでした。ただ、実動部隊は事前準備に力を入れますので、抜き打ち訓練では訓練場所が想定できずに参加機関としては事前の訓練が十分できなかったようです。
質問2
抜き打ち訓練をもう一回するべきではないか?
21年も経過しているので再検証が必要と思う。
回答2
ご指摘の様にかなりの時間が経過していますので、この時点で実施して再検証することが必要だと思います。兵庫県のみならず、全ての組織でより実践的な訓練をしてほしいものです。
質問3
学校における避難訓練でいつも悩むのが、特別支援の児童に対する防災教育訓練です。出来ることを。と考えるのですが、難しい。災害弱者となれば、子ども高齢者以外に障害を持った人もいるのですが何か手立てがあれば教えていただきたいです。
回答3
ご苦労が多いと思いますが、災害時に弱い立場になる人達のためにも、実効性のある訓練手法を開発してほしいと思います。学校だけでなく、周辺の自治会等の皆さんのご協力は欠かせないでしょう。自治会の皆さんとの合同訓練から始められては如何でしょうか。
質問4
訓練の制度を上げる具体的な方策は何があるのか?
回答4
訓練が終わった後が重要です。訓練中にも、別動隊として「検証員」を配置し、検証員が行った検証を基に、制度や体制、訓練手法等を再検討する、これを繰り返すことにより訓練精度も上がっていきます。
質問5
抜き打ち訓練のできばえから先生の責任問題や抜き打ちによる公務の被害の補償問題は発生しなかったのか。
回答5
その様な補償問題は発生しませんでした。訓練そのものが公務ですから、何かあったとしても、公務中のこととしての対応がなされます。勿論、私の責任問題も発生しませんでした。むしろ新しい取り組みとして内部的には評価がありました。
質問6
その時、とても優秀だったフェニックス情報システムはどうしてサーバーダウンしてしまったんですか?何が原因だったのか教えていただきたいです。
回答6
対策等に必要な地図情報の欠落、システムの取り扱いに不慣れ、端末の回線トラブル、トラブル回復のための間にある不備、端末の不足、等がありました。これらの課題は全てその後解決しました。
三ツ星ベルト株式会社 上席常務執行役員
山口 良雄様への御質問
質問1
初めて実施する、もしくは、現行を変更する事は一部の方から理解できない意見が出るのですが対応方法はどのような方法が効果的でしょうか?
回答1
当社は、トップから一般社員までコミュニケーションと風通しの良い環境を大切にしています。このことがいろんな意見が出ても、最後には良い方向にまとまることになります。同じように地域の方にもご理解をいただいております。
質問2
御社の避難訓練の見学か体験をさせていただきたいのですが可能でしょうか。
回答2
恐れ入りますが、ご参加はお断りさせていただいております。ご見学はお受けさせていただいておりますので気兼ねなくお尋ねください。
質問3
行政職員の防災意識を向上させる効果的な取り組みがあれば具体的に教えて欲しいです。
回答3
当社も社員に防災意識を定着させるには時間がかかりました。効果的な取り組みは、トップから一般社員までコミュニケーションと風通しの良い環境を大切にしていることだと考えています。このことがいろんな意見が出ても、最後には良い方向にまとまることになります。行政でもトップから一般職員までの平素のコミュニケーションを大事にし、常に言葉を掛け合うことのできる環境をつくる事が大切です。そして訓練も簡単なところから始めて徐々に量を増やすようにします。これを継続して行なうことで意識を高めることに繋がります。
質問4
本格的な総合防災訓練を行うに至ったきっかけ、想いは何なのか?
回答4
阪神淡路大震災当日は、当社の夜勤社員が近隣の消火作業にあたり火災の拡大を抑えました。当社は、「人を想い、地球を想う」基本理念の下、会社と地域の共存を目指しています。万が一、有事が発生しても地域の方と一緒に有事に備えたい想いで総合防災訓練を始めました。また、地域の方と社員がコミュニケーションを図れる各イベント(七夕まつり、クリスマス会など)を企画開催し地域の方との親睦も深めています。
質問5
日常的に防災に対して検討し、課題・対策・検討しているとの事、課題対策後はマニュアル改定につなげているのか?改定後の周知はどの様に行っているのか。
回答5
どんな災害が起こるのかわからないため、マニュアルは、基本的なことしか記載していません。基本的なことを徹底的に身体に覚えてもらおうと毎月の避難訓練や年1回の総合防災訓練を行なっています。「危機初動訓練」は、避難を含め地域住民の方と一緒に有事に備えられることを目的に管理者を中心に始めたところです。
神戸学院大学 現代社会学部 社会防災学科教授
前林 清和様への御質問
質問1
学校における避難訓練でいつも悩むのが、特別支援の児童に対する防災教育訓練です。出来ることを。と考えるのですが、難しい。災害弱者となれば、子ども高齢者以外に障害を持った人もいるのですが何か手立てがあれば教えていただきたいです。
回答1
通級の特別支援児童に対して。⇒避難訓練前に、避難訓練の手順や方法を訓練しておく。自分が何ができて、何ができないかを知ることが大切。
そして、教師はその児童に対してどのようなサポートをしたら良いか理解し、教職員、あるいは児童が避難時にサポートできるように、具体的な約束事を決め、まわりの児童にも周知する。そのうえで、全体の避難訓練を行う。最後の「ふりかえり」の際に、皆でよかったこと、課題などについて話し合う。
質問2
訓練の制度を上げる具体的な方策は何があるのか?
回答2
①学校の場合、児童・生徒が真剣に取り組むためには。⇒教師が防災訓練を熟知していること。そのためには、教職員だけの防災訓練を重ね、レベルアップしておくこと。
②訓練にリアリティを持たすためには。⇒破砕対応型防災訓練の工夫。避難経路に障害物を置いたり、火災が発生しているという看板を立てたり、や人命救助の要請を課したりして、訓練を現実に近い形にする。
③訓練の設定時間・場面を工夫する
ア 登下校中、イ 始業前、放課後 、ウ 授業中(普通教室・特別教室・体育館・運動場・プール等)、エ 休憩・清掃中、オ 校外での教育活動中、カ 他県等への遠足等や宿泊を伴う教育活動中 、キ 委員会や部活動中(長期休業日及び学校休業日を含む)など
④訓練の設定状況を工夫する
ア 管理職が不在の場合、イ 電話等が不通で、情報の収集や伝達ができない場合、ウ 停電等により、校内放送が使用できない場合、エ 渡り廊下や非常階段等、事前に想定した避難経路が被害を受けて使用できない場合、オ 幼児・児童・生徒・教職員が負傷した場合、カ 校内において幼児・児童・生徒が行方不明になった場合
キ 運動場が液状化し、噴砂、地割れ、陥没等で使用できない場合、ク 津波警報が発令された場合、ケ 地震発生後、火災の発生や津波警報の発令等、被害の拡大により複合災害を想定した場合など
⑤消防や地域の消防団、自主防災組織、企業、大学、自衛隊などと連携して行う。
⑥訓練を自分のものにするためには。⇒訓練のあと、必ず「ふりかえり」をすることで、参加者の気づきを知識や考え方に定着さることができる。
⑦学校では、年に最低6回以上訓練を行うこと。